討論Bar“シチズン”マスターの西岡が、政治、司法、時事等に関する辛口コメントを書き綴ります
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1998年7月に発生した「和歌山毒カレー事件」。
警察の強引な捜査と恣意的なリーク情報を受け、大マスコミがこぞって「犯人視報道」を展開した結果、裁判では「直接証拠無し」の有罪・死刑判決が出され、高裁、最高裁でもその判決が維持された。
この事件が発生した当時、私は「報道と人権」問題の運動に取り組んでいたこともあり、担当弁護士などとも意見交換をし、これは「冤罪確実」という確信を持っていた。
ちなみに裁判の経緯も注視してきたので、証拠関係については人より多くの知識があると自負している。
ところが、ここに来て犯行に用いられたとされる毒物「ヒ素」の鑑定結果が間違いであったことが分かったという、衝撃的な記事が「週刊金曜日」に掲載された。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130418-00010000-kinyobi-soci
これは京都大学の河合潤教授が、(中井)鑑定で計測された生データを再検証した結果であり、新たにサンプルを分析したものではない。
つまり、裁判で証拠採用された「鑑定結果」が、生データの中の都合が良い部分だけを抽出してまとめられた、恣意的な「作文」であった…ということが明らかになったのである。
東京理科大の中井教授が、兵庫県佐用市にある最新鋭分析機「スプリング8」を使って行った成分分析では、カレー鍋の近くにあった「紙コップ」内で微量に検出されたヒ素と、林死刑囚の自宅床下から押収された、シロアリ駆除剤のヒ素、さらに近隣住居に残されていた5種類のヒ素を比較分析している。
鑑定に用いられた「重元素」成分の比較では、これら7種のサンプルは全て一致しているが、河合教授が着目した「軽元素」成分で見ると、7種のサンプル全てが不一致である。
これでは、林死刑囚の自宅にあったヒ素が犯行に使われたヒ素であると断定することなど不可能だ。
この分析結果が再審の扉を開く決定的証拠になれば朗報である。
しかし、その前に「直接証拠が皆無の有罪・死刑判決」の異常さを、もっと多くの人に理解してもらうことの方が重要だ。
ほとんどのマスコミは週刊誌も含め「直接証拠は無いが、状況証拠は真っ黒」という表現を使っている。
だが事件を詳しく追跡していくと、その「状況証拠」すら「白」を指し示していることが判明する。
判決では「混入の機会が林死刑囚以外には無かった」と結論されたが、正確な混入時間や場所、どの鍋に混入したのかについて、公判中の審議でも、まったく特定できていないのだ。
さらに、調理場の駐車場から林死刑囚が立ち去った後の夕刻、カレーの味見をした主婦はヒ素中毒を起こしていない。
また、鍋の残留物検査では、捜査員がひとつのオタマで複数の鍋からサンプルを収集してしまっていた。
これは警察が杜撰な捜査を隠蔽し、見込みのシナリオに固執したあげく、マスコミによる「人物破壊工作」が有罪の「決め手」にならざるを得なかったという特異な事件である。
林家の夫婦間や親子間で交わされた、ごく一般的な会話の内容が「犯行を示唆するもの」とされたり、客観的証拠と矛盾する「目撃証言」が何の疑問もなく証拠採用されるなら、誰でもが無実であっても「死刑判決」を宣告される高いリスクを背負うことになる。
また、最新鋭分析機「スプリング8」の信頼性が権威として悪用された点も見逃すべきではない。
どれほど優秀な機械でも、比較分析手法に恣意が混じれば、その信頼性は吹っ飛ぶ。
そうした、ある意味当然の「検証」を忌避したまま、安易な死刑判決を書いた裁判所の罪は万死に値するだろう。
陸山会事件の控訴審で明らかになった司法の怠慢は、ここでも如実に顔を覗かせているようだ。
これでは我国が健全な法治国家であると、胸を張って諸外国に誇ることなど、とても出来やしない。
法曹関係者の猛省と、奮起、さらには私たち一般市民の人権、法治意識、メディアリテラシーの向上が、今ほど求められている時はないと言えるだろう。
以下の文は、私がHN「smac」で、阿修羅掲示板の投稿へ反射的にコメントしたものであるが、3月6日にはこのブログでも「小野市福祉給付適正化条例について」というエントリーをしている関係上、ここにも載せておこうと思う。
なお、コメント先の元記事は3月27日「まるこ姫の独り言」でエントリーされたもの。
http://jxd12569and.cocolog-nifty.com/raihu/2013/03/post-2c3c.html
阿修羅掲示板の他のコメントも興味深いので、ご参照頂きたい。
http://www.asyura2.com/13/senkyo145/msg/683.html
【以下転載】
相手が生活保護受給者であるか否かに関わらず、ギャンブル等で浪費癖のある隣人に「無駄遣いはやめましょう」と忠告するのは「小さな親切」です。
しかし、市民の通報を責務としたり、対象を生活保護受給者に限定するなら「大きなお世話」どころか、財産処分自由権の侵害であり、差別偏見を助長する「分断画策」です。
「過度なギャンブル依存を抑止する条例」なら、対象者を限定すべきじゃありません。
今回の条例の意図は、過度なギャンブル依存を抑止することではなく、生保受給申請に心理的抑圧を加え、法令で定められた受給資格の門を、行政の裁量で極力狭めようとする「給付ネギり作戦」でしかないと思います。
さらに重要なことは、公共の福祉を大義名分とし、偏見を持たれやすい対象に厳しい規制や監視を課す法令や条例には、行政の裁量権を肥大させるという、隠れた意図が存在するということです。
ACTAもそのひとつですし、「児童ポルノ規制法」や「暴力団対策法」等は、行政の認定いかんによって誰もが規制対象にされてしまう危険を含んでいます。
一部のマイノリティに対する人権侵害は、強権弾圧を正当化する「突破口」であり、為政者にとっては「抵抗の少ない所から片付けてしまえ!」という戦略なのです。
ナチスの弾圧対象が「ユダヤ人」→「共産主義者」→「一般市民」と拡大されていく過程で、多くのドイツ国民が「オレ、ユダヤ人じゃないから関係ない」「オレ、共産主義者じゃないから関係ない」…と徐々に陣地を失っていった歴史的な「茹でガエル」の教訓を忘れてはなりません。
小野市民の冷静な対応を望み、当該条例の廃止を求める意見書を市議会へ提出するとともに、「違憲条例」の疑いで住民訴訟を提議します。
2月27日、兵庫県小野市市議会に提出された「小野市福祉給付制度適正化条例案」を入手して 読んでみた。
短い文章なので、記事末に【参考資料】として添付するが、私の感想は一言…「あんた、なに様?!」だ。
「行政が受給者の生活を指導してやる」というような奢りが満開になった条例案と言わざるを得ない。
生活保護法では「受給者への指導・指示は受給者の自由を尊重し、必要最小限にしなければならない」とされており、これは優れて「人権への配慮」を唱ったものである。
私は常から「人権は国権に優先する」をスローガンにしているのだが、どうも多くの日本人には「ピン」と来ないようだ。
生活保護受給者が、どんな理由で受給者になったのかは、まさに多種多様なケースが存在するのだが、一般の人々はそれをケース・バイ・ケースで論考することがない。
「受給者→ただの怠け者」という、実に短絡的な印象でしか捉えないのだ。
そのような「蔑視」が根底にあるから、本条例案のように、鼻持ちならない「奢り高ぶり」の発想が出て来るのだろう。
極端なことを言うと「浪費」も「保護」の対象範囲である。
受給者から「浪費」する権利を奪うことは、人権侵害なのだ。
生活様式は人によって違う。
浪費型の生活様式を送っている人だって、自分の収入(当然、受給を含む)の範囲内でどれほどを浪費するかについて決定する自己決定権を持っているのであり、それを行政が規制する権利は憲法をどう解釈しても出てこない。
つまり本条例案は「違憲条例」という解釈も成り立つのである。
「税金で喰わせてやっているのだから、御上の言うことを聞け!」「これも、あなたの為だから…」などと言う、お為ごかしには虫酸が走る。
受給は(不正でない限り)保証された権利であり「お情け」ではない。
多くの市民団体が市長と全市議に「撤回・廃案」の申し入れを行っているようだが、これにどう答えるかで、市長や議員たちの人間性および人権意識が浮き彫りになるというものだ。
採決は3月14日(らしい)。
どの議員が賛成票を投じたか?…市民はしっかり監視しなければならない。
【参考資料】
議案第17号
小野市福祉給付制度適正化条例に制定について
小野市福祉給付制度適正化条例を別紙のように定める。
平成25年2月27日提出
小野市長 鳳来 務
(提案理由)
福祉給付制度における偽りその他の不正な手段による給付及び給付金の不適切な費消等を地域社会全体と連携して防止し、もって制度運用の更なる適正化を推進するため。
小野市福祉給付制度適正化条例
(目的)
第1条 この条例は、生活保護法(昭和25年法律第144号)第6条第4項に規定する金銭給付、児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)第5条に規定する手当額その他福祉制度に基づく公的な金銭給付について、偽りその他不正な手段による給付を未然に防止することとともに、これらの福祉制度に基づき給付された金銭の受給者が、これらの金銭を、遊戯、遊興、賭博等に費消してしまい、生活の維持、安定向上に努める義務に違反する行為を防止することにより、福祉制度の適正な運用とこれからの金銭の受給者の自立した生活支援に資することを目的とする。
(提議)
第2条 この条例において、次の各号に揚げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 受給者 生活保護法第6条第1項に規定する被保護者、
児童扶養手当法第4条の規定により児童手当の支給を受けている
児童の監護者その他の福祉制度に基づき給付される金銭給付を受給している者
または受給しようとする者をいう。
(2) 市民 市内に住所又は生活若しくは活動の拠点を置く者
及び一時的に市内に滞在する者をいう。
(3) 関係機関 警察、県、公共職業安定所等の公的機関をいう。
(受給者の責務)
第3条 受給者は、偽りその他の不正な手段を用いて金銭給付を受けてはならないとともに、給付された金銭を、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならないのであって、常にその能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図るとともに、給付された金銭が受給者又は監護児童の生活の一部若しくは全部を保護し、福祉の増進を図る目的で給付されていることを深く自覚して、日常生活の維持、安定向上に努めなければならない。
2 受給者は、次条第3項の規定に基づき市から必要な指導又は指示があった場合は、これに従わなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、生活保護制度、児童扶養手当制度その他の福祉制度の趣旨にのっとり、市民、地域社会その他関係機関と連携協力して、これらの制度に基づく金銭給付を支給するに当たって、偽りその他不正な手段により支給がなされない体制を構築するものとする。
2 市は、受給者が給付された金銭を、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を防ぐため、受給者の健全な生活の確保と自立のための必要な相談、指導、指示等を行う体制を構築するものとする。
3 市は、前項の相談、指導、指示等を行うに当たっては、受給者の意思を尊重し、生活の維持、安定向上の目的に資するための必要最小限度のものでなければならない。
(市民及び地域社会の構成員の責務)
第5条 市民及び地域社会の構成員は、生活保護制度、児童扶養手当制度その他福祉制度が適正に運用されるよう、市及び関係機関の調査、指導等の業務に積極的に協力するものとする。
2 市民及び地域社会の構成員は、地域活動で得た人と人とのつながりを活かし、相互に助け合い協力して、要保護者(生活保護法第6条第2項に規定する者をいう。)を発見した場合は速やかに市又は民生委員(民生委員法(昭和23年法律第198号)の規定により厚生労働大臣の委嘱を受けた者をいう。)にその情報を提供するものとする。
3 市民及び地域社会の構成員は、受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供するものとする。
(適正化協議会の設置)
第6条 市長は、第4条第1項及び第2項に規定する福祉制度の適正な運用を総合的かつ効果的に推進するため、小野市福祉給付制度適正化協議会(以下「適正化協議会」という。)を設置するものとする。
2 前項の適正化協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。
(推進員の設置)
第7条 市長は、小野市福祉給付制度適正化推進員(以下「推進員」という。)を置き、第5条第3項の規定による情報提供があった場合又はそれに相当する疑わしい事実があると自ら判断した場合は、その詳細な実態を推進員に調査させるものとする。
2 前項の推進員の調査活動は、犯罪捜査のためと解してはならない。
(不正利得の徴収等)
第8条 前条第1項に規定する実態調査により受給者が、偽りその他不正な手段により給付を受けたことが判明した場合には、生活保護法第78条、児童扶養手当法第23条その他これに相当する規定により、その支給した金銭の一部又は全部を受給者から徴収するものとする。
2 前項による処分のほか、生活保護法第85条、児童扶養手当法第35条等の罰則規定がある場合には、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第230条の規定による告訴又は同胞代239条の規定による告発を行い、厳正に対処するものとする。
3 受給者が給付された金銭について、刑法(明治40年法律第45号)第185条又は同法186条に規定する賭博に費消していると認めた場合も、前項と同様とする。
(個人情報に関する取扱い)
第9条 市は、この条例の施行に当たっては、知り得た個人情報の保護及び取扱いに万全を期するものとし、当該個人情報を業務の遂行以外に用いてはならない。
2 偽りその他不正な手段による受給等に係る情報等の通告、通報、相談等に関係したすべての者は、正当な理由なく、その際に知り得た個人情報を他人に漏らしてはならない。
(補則)
第10条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。ただし、第6条及び第7条の規定は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。
【以上】
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